有明海でした非常に不思議な体験について。はたから見たら「なんじゃこら」と思うかもしれないけど、自分の備忘録代わりに。
元々は佐賀県に入り、あまりにも開放的な景色を見たのがはじまりだった。一面に広がる畑と白い雲が浮かぶ青い空。照る太陽。畑を挟み込むように道が縦横にはしっていて、ただただ平面がひたすらに広がっていた。佐賀市なのにね。
アクセルを踏むと、タコメーターとスピードメーターが連動して少しずつ回っていく。ギアが変わってエンジンの音が変わり、回転数が下がる。開けた窓からは心地よい風。広がる平野には野焼きの白い煙がそこかしこからあがって……信号が青のまま左折、「10km先、右方向です」。
とても心地よく飛ばし、陽光が眩しい空を見ていたら、なんだか自然に涙が出てきた。空はとても青くて、雲はとても白くて、文章にすればなんてことはないんだけど、その景色への感動と、もう少しで旅が終わってしまう一抹の寂しさみたいなものを感じた。
そんな気分のまま、佐賀県を過ぎ、長崎県に入った。 ↑からそれでも1時間半くらいは経ってたんだけど。
左手側は干拓か何かで海がなんだか不思議な感じになっていた。右手は普通の市街地になったり、山だったり。太陽がだんだんと落ちて、景色が少しずつ黄色くなっていく。空はだんだんと青さを増し、雲は端々から光をこぼしている。道はやや暗くなって、でも対向車は黄色とも橙色とも言えないような微妙な色を反射してキラキラ光っていて。カーステレオからはハイテンポの曲が流れ、風は普通とは違った潮の匂いを運んできていた。 それら全てが綺麗に噛み合った「瞬間」、不思議な時間が訪れた。
ああ、この素晴らしい瞬間に出会うために、私は生まれてきたんだ。生きてて良かった。
もう何の疑念もなく、普段のくだらないごねごねした感情が嘘のように、心の底から思った。今までの自分に伝えたかった。何も心配しなくても大丈夫だよ、と。
そこにあったのは、滲んだ視界に映る美しくてとても鮮やかな景色だけじゃなかった。手に伝わるハンドルと、そこから伝わる地面の感触。気分を高揚させる音楽、窓から聴こえる普段はやかましいロードノイズとブレーキ音、対向車とのすれ違いの風の音すら心地よかった。ランドセルを背負った小学生が笑いながら、自転車に乗った中学生は少しスピードを出して、そして測量を終えた男性が測量器具を担いで、それぞれに家路に着こうとしていた。 そこには、何もかもがあるように思えた。
できるだけ正確に書き残そうとしているんだけど、あの名前のない感情はあらゆる言葉を尽くしても表現できそうにない。感動的という言葉すら合っているかどうかもわからない。写真も全く撮れなかったというか、撮るために止まるという選択肢があの時には全くなかった。
そんなに心打つ風景だったか、と言われると、決してそうではなかったと思う。音楽もそうだし、まあ206もお世辞に言っても全部が全部素晴らしい車でもない。良い音で回るエンジンでもないし。
でも、その“瞬間”、本当に世界は鮮やかに輝いていた。まるでそのために今までの全てがあったかのように。本当に。

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